不揃い

あの街角を曲がるとブランドの顕示が始まる。地下鉄を手段とした人間が地上へと何とか這いつくばり、温かい家庭の待つ我が家へ行く人間は地下へと急落下する。横から見たヒエラルキーでいつも安定しているのは中位に居るコンクリートだけなのだろう。てっぺんに立つのは高層ビルの屋上でくつろぐ人ではない。白い日傘を差したババアだ。だが、彼女は素性を明かさないばかりか普通のババアとして生きている。すごいババアなのに。ロクシタンから出てきた外国人観光客が他人の空気を吸っていた。隣の人が吸うはずだったのに。でも、靴を綺麗に磨いていたからという完璧な理屈に一同ひれ伏した。歩行者天国は一時を回った。お世辞でもなく一時を確かに。NYやLAでよく見るずっと止まっている人がいたので写真を撮る。帰宅後の風呂場でぼんやり見たその写真はまだ止まったままだった。体に悪いからやめた方がいいと思う。

もし、運動会の障害物競走で使う網が手に入ったら僕はどうやって使おう。考えたけど答えが見つからない。これがアポリアというやつか。あのサイズ感を家に置くことは出来ないし、切断するのはプライドと校長先生が許さない。綱引きの綱なら船から落ちた人を助ける命綱として使える。だが網は違う。船から落ちた人を捕らえる捕獲網になってしまう。網と綱。遠くから見たら、荒いコピー機を使ったら、小学生に聞いたら、皆一緒に見えるだろう。でも異なる内容。素材は同じにもかかわらず。

議論を続けるのもオツなもんだが、オツじゃないものも黙ってない。飛行機が頭上を通過した時、タイソンゲイはスタートを切った。そのスピードは他7人を置き去りにするだけでなく、抜かれた飛行機さえも子ども扱いしてしまったのだ。ゲイが飛行機下を通過したのだ。下馬評を覆す結果となったことをゲイは後に語った。ただ、あまりにも語りすぎて何も印象に残っていない。何でもいい一言だけ言えばよかったものをベラベラと喋った。語りがゲイを過ぎたのだ。しかしチャンスは再度訪れる。あの人は今的な番組にゲイが呼ばれたのだ。しかし、ゲイはそこで一言だけyeahと言った。ゲイはまた間違えた。喋らなくていい時に喋りまくって喋るべき時に黙りこくった。逆ゲイ。オナベ。

三度目のチャンスが来たらしいがその時筆者はゲイに興味なんてなかった。受け答えは完璧だったとSNSで言われていたが、誰もコメントも👍も押していなかった。時代がゲイを通過したのだ。

最後にゲイの三度目の正直を調べたのでここに記す。

タイソンゲイ「もし、運動会の障害物競走で使う網が手に入ったら僕は無人島に一つだけ持って行くものとして使うだろう。」