家
タクシー。小林タクシー。それが俺の名だ。
親父はごく普通のサラリーマンで母親もごく普通のレフェリーだ。卓球の。
姉は実の姉をやっており、弟は最近、家庭教師のアルバイトを採用したらしい。
核家族化が進む中、家は同じ関東圏にあるにもかかわらず同居を考えたことすらない。
朝一番に家を出るのはもちろん親父だ。
俺が起きた頃にはもう枕の加齢臭すら通勤している。
その後、姉、弟、レフェリーと家を出て
最後にタクシーと書いてタクシーと読む俺。
帰ってくるのは逆に、荒川良々、荒川良々、荒川良々、荒川良々、荒川良々の順になる。
となると一番乗りで風呂に入るのは荒川良々である。その間に飯を作る荒川良々に、いつまでもゲームをする荒川良々。チャリンコの鍵を無くしたと騒ぐ荒川良々に、腰を痛めたので湿布を探す荒川良々。
そこに俺と書いて俺と読むタクシーの帰宅。
続いて、姉、弟、笛が帰ってきて荒川良々2つ挟んで父親が帰ってくる。
そんな風にある家は一日を終える。