家④

出たな魑魅魍魎マン。5歳になる甥っ子は一人でブラウン管を見ながら格闘している。晴天だから外へ出ようと声を掛けても、たばこを買うためだということがバレているのか、見向きもしてくれない。可愛げはないが、魅力はある。魑魅魍魎マンの魅である。たまに描く絵をチラッと覗いた時に只者ではないことを感じた。VにLを合体させたお馴染みのルイヴィトンのロゴを二つ半描いていたからである。勿論、そんな高級店なんて行くような家柄も経験もなく、ニュースや保育園といった外部の影響を受けることはある一度以外なかったと姉にも聞いている。そこで訊ねれば解決したものを小林タクシーこと私は二つ半の衝撃に開いた口を塞げずにいた。例えば、THやCDなら分かる。阪神、中日描きたくなるよねーと声を大にして言える。しかし、ヴィトン。それも二つ半。半は、見事に半。ルイヴィトン50%オフ。セール中の商品は売れ残りだからあまり買うのはオススメしないよと保育園の先生に言われたと言っていたのをそういや思い出した。

結果、先生は大のユニクロ女で杞憂に終わった詮索も彼の偉大さを象徴させる要因になった。

この一帯は売れ残りが多いらしく、マンションよりも一軒家の方が安く買えると姉が今朝言っていたのがさっきの事項と繋がりそうだったが、スルッと交わされ海底へと消えていった。

商売にヤクザが絡むこの町の不動産は現代の風潮に逆らっていることもしばしばあった。マンションが一軒家に占拠されて衰退を余儀なくされてしまうのも背景にヤクザがいるからである。このまま蹂躙されてしまうやも知れないマンション経営者に正着の行方は分からなかった。ということで、魑魅魍魎マンのマンである。

甥っ子には実は血の繋がらない18つ上の姉がいて、ついこの前、彼女はダイヤモンドバックスのセットアッパーから芦屋の女ボートレーサーに転じたらしい。つくづく親のとんでもない強烈な血に驚かされる。血魅魍魎マンの血である。実際、85歳にしてまだバリバリ免許更新を行なっているし、血糖値も正常で血管年齢も30代らしい。フィジカルの面でもシワは見当たらなければ、爪もピカピカ。そして何よりそのロングヘアーの髪である。艶がありすぎて艶落としをネットで購入したというくらいだ。ネットも使えてるし。毛量の多さは子供にも伝わり、一度、ほうきが無い時に代用したとかいうのはまた違うお話し。血魅毛量マンの毛量である。

 甥っ子がテレビで格闘していたのがジミー・モー・リョーマンというハリウッド俳優であったことに気づいたのは、アカデミー賞で甥っ子が作品賞を獲得した時であるがこれもまた後のお話し。