新しい音楽
DVDを借りた夜、西に向かう電車を横目で追いかけてからふと気付くのは枯葉が教える訪問。
帰宅後にすることといえばピンポンダッシュ。
そのため帰宅した直後外出し、更に近所にするのは憚られるので、電車で隣駅まで向かう。
東に向かう電車に揺れながら聴く音楽は今日も3分24秒で終わりそこから12秒後に到着する。
3分36秒の音楽があれば最適なのだが、この世にそんな曲は一つもない。あるなら教えてもらいたいが、もう一度言う。この世にそんな曲は一つもない。
改札を通ろうとすると、ブーっと音がした。
一瞬、嫌な気がしたがそんなことはない。
というのも実は、自分の携帯電話のメール受信音は改札の引っかかった音に設定してあるのだ。
そんなことはないことはなかった。いや、実際にはそんなことあったのだが、ホントにチャージ額が足りてなくて携帯とダブルで鳴っていたのだ。
綺麗にハモっていたのだ。まるでPUFFYが2人とも女性であるかのように。
路地裏にある住宅街に入ったのと同時に自分も
クラウチングスタートに入った。
性格は、丁寧かつ慎重。小学校時代には普通の駆けっこで最後を任されたほどの韋駄天だと自負している。勿論リレーではバトン役をした。
右、左、左、右、突き当たりを左に曲がる。
何度もシミレーションを行い、いざ本番。
ピストルが鳴ったのと同時に決めるロケットスタート。歓声が息を飲む音さえ聞こえそうな沈黙に変わった途端、ピストルが2発鳴った。
嫁のフライング。息子達と一緒に👎を作る。
🙏を作ってきた嫁に早く飯を作れと近所の河合さん。
一人帰路につく嫁と裏腹にレースは始まった。
会場付近に住む人たちもベランダから顔を出し応援する中、ピンポンダッシュの応酬。
まるで押収にくる警察官のように欧州仕込みのテクニックを魅せる。
指揮者の待つ一軒家を最後に演奏は終了した。
ピンポンダッシュを不快と思う人は多いかもしれないが、自分はそうは思っていない。深いと思っている。私の名前は寺山だ。もう一度言う。ピンポンダッシュを不快と思う人は多いかもしれないが、自分はそうは思っていない。深いと思っている。私の名前は寺山だ。最後に言う。私の名前は寺山だ。
歓声に応える我々にブーイングする者がいた。
携帯電話だ。更に相手は先程のお返しとばかりの寺山嫁だ。
「ご飯できたわよ👍」
こうして愛する息子達、大嫌いな近所の河合さんと共に2度目の帰宅を終えるのだ。